1.制度の概要
相続人以外の親族の生前の貢献を考慮するための制度が創設されました。相続人以外の被相続人の親族が、無償で被相続人の療養看護等の特別の寄与を行った場合には、一定の要件の下で、相続人に対して金銭の請求(特別寄与料)をすることが出来るようになります。
例えば、父親が、以前より長男夫婦と同居をしており、この長男の妻が父親の療養や介護をしていたとします。この場合において、父親よりも先に長男が亡くなった場合で夫妻に子供がいない場合には、長男の妻には相続権がありません。
これまでの民法の制度だと、その長男の嫁は、どれだけ一生懸命に義理の父親の介護をしていたとしても、寄与分は相続人だけで、相続人以外の親族には寄与分はなく、財産を相続する権利がありませんでした。逆に、相続人である次男と長女は父親の療養や看護を全く行っていなくても、相続権がありますので財産を取得することができます。
そこで、創設された特別寄与制度では、この義理の父親の療養や看護によって、その人の財産の維持や増加に寄与した場合には、長男の嫁は、他の兄弟に対して、寄与に応じた金銭の請求をすることが出来るようになりました。
<現行の実務の代表的な考えかた>
「第三者の日当額×療養看護日数×裁量割合(実務上は0.5~0.8)」
長男の嫁の寄与料を1日6,000円とし、2年間療養看護に努めた場合には、
約6,000円×365日×2年×0.7(裁量割合)≒300万円の特別寄与料を請求することができると計算できます。しかし、まだ施行されてませんので、実際の金額の計算はこれからです。
2.税務上の取扱い
- 特別寄与者(長男の妻)
特別寄与料を遺贈により取得したものとみなして、相続税が課税されます。
なお、遺贈ですから、相続人以外が財産を相続したとして、相続税が2割加算になります。 - 特別寄与料を支払った相続人
支払った特別寄与料の額は、その相続人の課税価格から控除できます。 - 特別寄与料の支払いが確定しない場合
相続人の相続税の申告期限までに確定しない場合には、確定してから4月以内に限り、相続税の更正の請求で還付が可能です。 - 新たに納税義務が生じた長男の妻の申告時期
特別寄与料の額が確定したことにより、新たに相続税の納税義務が生じた親族は、相続税の納税義務が生じたことを知った日の翌日から10月以内に相続税の申告書を提出する義務があります。
3.現行の寄与分制度との相違点
- 異なる点
①対象者
従来の寄与分制度は、「被相続人の相続人」が対象なのに対し、新設の特別寄与料制度は、「相続人ではない被相続人の親族」が対象となります。
②権利を行使出来る期間
従来の寄与分制度は、権利を行使できる期間に規定はありませんが、新設の特別寄与制度は、相続の開始及び相続人を知った時から6か月を経過したとき又は相続開始の時から1年を経過したときまでが権利行使の期間となります。
- 同じ点
①手続きの流れ
相続人及び特別寄与者による当事者間協議が整わないときは、特別寄与者の請求によって家庭裁判所が特別寄与分を定めることとなります。
②限度額
特別寄与料は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることが出来ません。
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