小売業などの事業に利用されている土地は、特定事業用宅地等の適用対象となりますが、2019年4月から縮小されることになりました。

1.改正の概要

  1. 相続開始前3年以内に事業の用に供された宅地は、特例対象から除外されます。
  2. ただし、その宅地の上で事業の用に供されている減価償却資産の価額が、その宅地の相続時の価額の15%以上であれば、特例の適用対象となります。
    小規模宅地等の特例による節税効果が、宅地評価額の概ね15%程度になることを踏まえ、節税額以上の資本投下が行われていれば、節税目的とは認定しないということです。
    事業用宅地は建物の敷地であることが多いので、15%要件を満たすのは比較的容易と思われます。一方で、遊休地や新たに購入した土地に、僅かな資金で建物・構築物を設置し、特例を適用する節税手法は規制されたことになります。
  3. この改正は、2019年4月1日以後の相続から適用になります。

2.今後改正が検討される問題点

  1. 申告期限後の保有も必要か
    特例を受ける場合、事業継続と保有継続の要件がありますが、これらの継続期間は相続税の申告期限までです。申告期限まで事業を継続し、申告期限直後に廃業や売却しても、特例の適用が可能です。
  2. 事業用の債務は非事業用の資産からの控除を認めない?
    借入れで事業用宅地等を購入すると、宅地の評価額が特例適用により8割減額され、さらに債務控除が可能になります。
    なお、税務署は、借入金による節税対策を厳しく見る傾向があり、金融機関の稟議書に「相続税対策のため不動産を購入」と記載されていたために、税務調査で問題になった事例もあります。

    (例)全額借入金で10億円の事業用宅地を購入した場合
    事業用宅地の評価は、特例適用により10億円×(1-80%)=2億円となります。借入金10億円について債務控除を受けることで、差し引きマイナス8億円となります。このマイナス8億円は非事業用資産10億円と相殺され、課税遺産総額が2億円に圧縮されます。
  3. 事業承継者のみの軽減にする
    相続税の計算は、課税遺産総額から算出した相続税の総額を、相続する財産の割合で相続人に按分することになっています。特例適用により課税遺産総額が減少すると、相続税の総額が減少しますので、事業承継者以外の相続人の相続税も減少します。

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