1. 名義株とは何か

「名義株」とは、会社の株主名簿に記載されている株主とその株式の実質的な所有者とが一致していない株式のことです。つまり、「書類の名義上の所有者と実際の所有者とが違う」株式のことです。

1990年以前の商法では、「会社を設立するときは最低7人の発起人が必要」とされていました。そのため、創業者が100%お金を出しているものの、家族や親戚、従業員などの名前を借りて会社を設立することが行われていました。この親戚や従業員は、名前を貸しただけのつもりなので、自分がその会社の株主であることを認識していないケースが多分にあります。「実際にお金を出しているのはオーナー社長なのに、株主として登録されているのは別の人」なので、名義株となります。

税法上、このような名義株は、名義人の財産ではなく実質的な所有者(真の所有者)の資産として取り扱われます。実際に、1967年11月17日の最高裁の判決で、「出資をして名義を借りた人」=「名義借人」が、真の株主であるとの判断がされています。

2. 名義株の問題点

同族会社の創業者の相続税の申告については、税務調査時に会社の株主名簿のチェックや質問が行われることが多いです。相続税は、名義が誰であれ実際にその財産を所有しているのが被相続人であれば課税の対象とされるので、誰も知らなかった名義株により多額の追徴課税を受けることもあります。

調査の際に、名義株ではなく実体としてそれぞれの株主(=名義人)のものであると主張した場合、もしかしたら相続税の課税を一時は免れることができるかもしれません。しかし、将来的に名義人から株主としての権利を主張されたり、配当金の増額や、株の買い取り請求をおこされたりするかもしれません。一時の課税逃れが、その後に大きなリスクを背負う可能性もあるのです。また、名義人に相続が発生したとき、真の所有者の側で名義株である旨の立証ができず、名義人の相続人から高額な価格での買い取りを要求されることも予想されます。

このように税務的な問題だけではなく、名義株を解消せずに放置しておくと、法的な問題に発展する可能性もあるのです。

3. 名義株の確認

会社の株主名簿、もしくは法人税申告書の別表2「同族会社の判定に関する明細書」にて、そこに記載されている名義人が真実の株主であるのかどうかを確認してください。創業者が存命であれば、創業者に名義株の確認をするのが良いと思います。

会社設立時に名義を借りる場合に、名義貸与人との連名で「名義貸与承諾書」を作成していることもあります。これがあれば名義株である事実がはっきりします。

これがない場合、設立時の資本金を実際には誰が振込みしているのか、配当金の支払いや株主総会の通知は誰に対して行われているかを確認し、真の所有者が誰なのかを明らかにする必要があります。

4. 名義株の整理・解消

①.名義を借りた相手と連絡が取れる場合

名義株であることが判明したとしても、勝手に株主名簿や法人税別表2を書き換えることはできません。会社設立時の資料の整理、配当金の支払状況などが判る資料、その名義人の株主総会への出席状況が判る資料を整理します。その資料を基に名義上の株主に対して名義株であることを説明し、承諾をしてもらった上でその株式が名義株である旨の確認書を作成し、株主名簿及び別表2を書き換えます。 設立当初の名義貸与に関する覚書や念書等が存在せず、名義人から名義書換の協力が得られないときは、株式買取りや種類株式を活用した少数株主の排除を検討するなどの対策が必要となります。

名義株であることが判明したとしても、勝手に株主名簿や法人税別表2を書き換えることはできません。会社設立時の資料の整理、配当金の支払状況などが判る資料、その名義人の株主総会への出席状況が判る資料を整理します。その資料を基に名義上の株主に対して名義株であることを説明し、承諾をしてもらった上でその株式が名義株である旨の確認書を作成し、株主名簿及び別表2を書き換えます。 設立当初の名義貸与に関する覚書や念書等が存在せず、名義人から名義書換の協力が得られないときは、株式買取りや種類株式を活用した少数株主の排除を検討するなどの対策が必要となります。

②.所在不明株主の株式売却制度

所在不明で連絡の取れない株主について、次の要件をいずれも満たしているときは、取締役会の決議により、裁判所の許可を得て株式を売却すること(自己株式取得も可能)が認められています。

  • ・株主に対する通知又は催告が5 年以上継続して到達しないとき
  • ・その株主が継続して5 年間剰余金の配当を受領しなかったとき

5. 後発的に発生してしまう名義株

創業社長が生前に会社の株式をお子様に贈与するケースが多くあります。この場合、贈与契約書を作成し、贈与税の納税を済ませていることがほとんどだと思いますが、「贈与契約書もあって、贈与税も納めている」という場合でも、それだけをもって株主が贈与を受けたお子様なのかは証明できません。

本来であれば、会社は会社法第125条に定められている通り、本店に「株主名簿」を作成して保管しておく必要があります。株式の贈与が行われた場合、「名義人を書き換えて、株主名簿を更新」しなければなりません。また、毎期決算ごとに提出する法人税別表2の株主欄は変更されていなければなりません。

しかし、贈与契約書の作成のみで、株主名簿をきちんと整備せず、別表2でも株主の変更をしていないケースも見受けられます。実際には、贈与契約書を提示し、贈与の事実を説明することで相続税の申告時に名義株という扱いを受けることは無いと考えられますが、そのために多くの説明をしなければならなくなります。

このようなトラブルを防ぐためにも、株式を贈与する場合は、「贈与契約書」と「贈与税申告書の提出」のほかに、「株主名簿の整備」及び「法人税別表2の記載変更」を確実に行っておくことが大事です。

本ページに掲載した画像は情報サイト相続.co.jp様より転載許可を得て掲載しています。