1. 遺言書による遺贈の留意点

① 包括遺贈

包括遺贈とは、財産を特定して受遺者に与えるのではなく、全相続財産の5割や 全相続財産の3分の1といったように、割合で相続財産を譲渡することです。包括受遺者(包括遺贈を受ける人をいう)は、相続人ではありませんが実質的に相続人の地位と類似しているので、民法上「相続人と同一の権利義務を有す」とされています。 この場合、包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有することになっていることから、不動産等のプラスの財産だけでなく、債務等があれば債務等も引き継ぎます。

② 特定遺贈

特定遺贈とは、「○○区の土地をAに遺贈する」「○○銀行の預金をBに遺贈する」というように相続財産から特定の財産を無償で譲り与えることです。 これは、相続財産の特定が明確なので、遺言が執行されやすいのが特徴ですが、遺言書の相続財産の記載が明確でないと、遺言が執行されないことがあります。

2. 相続税申告上の注意点

債務控除ができる者は相続又は遺贈により財産を取得した相続人と包括受遺者に限られます。

つまり、被相続人が借入金等の債務を相続人以外に特定遺贈したときは、「特定受遺者」は債務を負担する事になりますが、相続税計算上借入金などの債務だけを「債務控除」することはできません。

よって、相続人でないAさんに遺贈する場合、遺言書に「○○区のアパートの土地建物の購入建築に係る借入金を負担することを条件に、その土地建物を遺贈する」という負担付遺贈にすれば、土地建物の相続税評価額から借入金の額を差し引いた金額が土地建物の課税価格となるので、実際には相続税計算上借入金等の債務の部分を控除できます。ただし、葬儀費用につきましては負担付遺贈ができませんので、特定受遺者は葬儀費用を債務控除することができません。これは遺言作成の際には、留意すべき点になります。

3. それぞれの特徴

ア.包括遺贈の特徴

  • ・包括受遺者には法人もなれます。
  • ・包括遺贈には不動産取得税はかかりません。
  • ・包括受遺者は債務について指示された割合だけ負担する義務を負います。
  • ・包括遺贈は代襲相続がないので、受遺者が被相続人より先に死亡すると遺贈の効力は完全に消滅します。

イ.特定遺贈の特徴

  • ・特定遺贈されるはずの相続財産が、相続の開始前までに異動・消滅したときは、特定遺贈の権利を失います。
  • ・債務については、特に指定がない限り負担する義務がありません。
  • ・相続人以外が特定遺贈された場合は、特定受遺者に不動産取得税がかかります。

4. その他

最近の不動産経営は、計画的な資金計画を建てることが要求されます。建築してからすぐのころは、家賃収入も入り、税金も安く、資金繰りはとても組みやすいです。しかし建築してから15年目あたりから資金繰りは必ず悪くなります。資金繰りが悪くなってから対策をたてるよりもあらかじめ対策を講じておけば安定した不動産経営をおくる事ができます。

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