1.海外不動産による節税とは?
ハワイなどの海外の中古住宅は日本の中古住宅に比べ、①土地の価格が安いため、相対的に建物の価格が高い、②流通する物件数が多く、時の経過による建物価格の値下がりが少ない、といった特徴があります。
そこで、法定耐用年数(木造であれば22年)を経過した中古住宅を購入して賃貸し、中古耐用年数(木造であれば4年)で多額の減価償却費を計上して赤字を作り出せば、給与所得などと損益通算して所得税・住民税を節税できます。税率が高い高額所得者は特に効果的でした。
そして、5年以上所有して売却すれば、譲渡益に対して長期譲渡税率(20.315%)の税金ですみます。海外の中古住宅事情と、税率差を利用した節税スキームというわけです。
2.改正の内容は?
令和3年分の確定申告より、海外の中古不動産の賃貸による赤字はなかったものとして計算します。令和3年以降に購入した物件だけではありません。令和3年以前に購入した物件にも適用されますので、注意が必要です。築22年の木造住宅を1億円(建物8,000万円+土地2,000万円)で購入し、年間賃料500万円で賃貸した場合。
令和2年までの海外の中古不動産の貸し付けによる不動産所得
令和3年からの海外の中古不動産の貸し付けによる不動産所得
中古資産であっても法定耐用年数(木造であれば22年)で減価償却しているのであれば、赤字が生じても他の所得と損益通算できます。
3.ないものとされた損失はどこへ?
改正により、ないものとされた損失はどうなるのでしょうか。令和元年に海外不動産を購入した場合で考えてみます。まず、令和元年の損失1,600万円と令和2年の損失1,600万円の合計3,200万円は、他の所得と損益通算できます。
令和3年の損失1,600万円と令和4年の損失1,600万円の合計3,200万円については改正が適用され、損失はないものとされます。
長期譲渡になる令和6年に売却すると、令和3年と令和4年にないものとされた損失3,200万円が売却する際の取得費になります。 売値1億円-(土地取得費2,000万円+ないものとされた損失3,200万円)=譲渡益4,800万円
売却時に取得費になることが明らかになったことで、すでに海外不動産を所有している人は、とりあえず一安心といったところでしょうか。
4.売却時の問題点
今回の税制改正で、海外不動産への投資需要が減少すると思われます。そうなりますと心配なのが、すでに所有している不動産の価格が下落するのではないかという点です。売却のタイミングは慎重に検討する必要があります。まだ海外不動産を所有していない人にとっては、海外不動産の相場下落はチャンスかもしれません。税制改正により節税効果はなくなりましたが、利回り商品としての購入を検討する人もいます。
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