賃借人の原状回復義務の明確化(改正民法 621 条)

賃貸借契約が終了した場合には,賃借人は,賃借物を原状(元の状態)に戻して賃貸人に返還しなければならないと解されています。しかし,これらのルールは改正前の民法の文言上は明確ではありませんでした。
改正後の民法では,賃借人は,賃借物を受け取った後に生じた損傷について原状回復義務を負うこと,しかし,通常損耗や経年変化については賃借人は原状回復義務を負わないことを明記しました。

賃借中に借り手が修繕が可能な場合(改正民法 607 条の 2)

事例1

Aさんは,Bさんから家を借りて住んでいる。備付けのエアコンが故障したため,Aさんは,Bさんに対してたびたび修理を依頼しているが,なかなか修理してくれない

事例2

Aさんは,Bさんから家を借りて住んでいるが,台風で屋根が損傷し,雨漏りがするようになった。次の台風が接近しており,早く修理したい

借りている建物が雨漏りするなど,修繕が必要な場合でも,賃借物はあくまで賃貸人のものですから,賃借人が勝手に手を加えることはできませんでした 。
しかし,実際に賃借物を使っているのは賃借人ですから,賃借人が修繕することができないのは、不便です。 民法改正で,次のように場合には、 賃借人が修繕することができるようになりました

<修繕が可能な場合>

① 賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知したか,又は賃貸人がその旨を知ったのに,賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき
② 差し迫った事情があるとき

敷金ルールの明確化(改正民法 622 条の 2)

事例3

Aさんは,Bさんから家を借りた際に「保証金」という名目で賃料債務等の担保として金銭を差し入れていた。賃貸借契約が終了し,Aさんはこの家を退去したが,賃料の未払等はないのに,Bさんは差し入れた金銭を返還してくれない。

改正前の民法には,敷金の定義や敷金返還請求権の発生時期についての規定はありませんでした。 改正後の民法で,敷金を「いかなる名目によるかを問わず,賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で,賃借人が賃貸人に交付する金銭」と定義しました。
つまり、賃貸借契約が終了して賃借物が返還された時点で敷金を返還しなければならないこと,その返却する金額は受領した敷金の額からそれまでに生じた未払賃料や借り手が負担すべき修繕費の額を控除した残額であることを明確化しました。

(参考文献:法務省「賃貸借契約ルールの見直し」)

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