<生前贈与の利用法>

相続税の節税対策の基本は、子供や孫に現金預金などを贈与して、相続税を減らすことです。生前に贈与すると、教育費や住宅ローンなどを抱えている子供世代に喜ばれるということもあります。また、子どもだけでなく孫などにも贈与することができるので、相続人間の不満を買わないように、うまく調整することで、相続時のトラブルを防ぐことができるのも生前贈与の長所です。
なかでも、もっともよく使われる生前贈与の王道が「暦年贈与」です。暦年贈与とは、毎年の贈与が基礎控除額110万円以内であれば非課税となる「暦年課税」の制度を利用する贈与のことです。
さらには非課税措置の特例があります。この特例は贈与を行う人の子供や孫を贈与の対象としており、住宅取得等資金の贈与なら上限が1,500万円など、限度額も大きくなっています。また、子や孫の数だけ贈与することができるので、相続財産を大幅に圧縮することができます。
他にも教育資金では、1,500万円の限度枠内であれば留学費用や私立校の入学時の寄付金にも使えますし、そのうち、500万円までは学校以外の進学塾や習い事などの費用にも充てることができます。贈与の非課税限度額が1,000万円の結婚・子育て資金については、不妊治療費やベビーシッター代まで幅広くカバーしています。

<来年度の税制改正>

1.住宅取得等資金の贈与の特例

住宅取得等資金の贈与の特例については、贈与される子や孫の所得金額の要件が1,000万円以下である場合を条件に、住宅の面積の下限は50㎡から40㎡に引き下げられました。一方で、今年4月から非課税枠の上限を1,200万円に引き下げる予定でしたが、現行の1,500万円を維持することが決まりました。この改正は、令和3年1月1日から適用されます。

改正後適用関係(消費税率10%)



改正で延長される特例を使って贈与を行うなら、必ず留意しておかなければならない変更があります。それは節税目的の教育資金贈与の特例です。どのように節税しにくくなるのか、制度の内容から見ていきます。

2.教育資金贈与の特例

今年3月31日までとされていた期限が令和5年3月31日まで、2年間延長されます。

(事例)
祖父の相続財産は不動産が4,000万円、預貯金3,000万円の合計7,000万円。相続人は子ども一人。孫2人に教育資金1,500万円をそれぞれ贈与します。生前贈与をしなかった場合は、相続税480万円ですが、生前贈与をしていれば相続税は0になります。これは、相続財産が4,000万円(7,000万円-1,500万円×孫2人)となり基礎控除の4,600万円を下回るからです。教育資金の贈与の特例を使う最大のメリットは、非課税で多額の贈与ができるという点です。一回贈与してしまえば、完全に相続財産から切り離されるので、節税効果がとくに大きいです。

しかし、来年度の税制改正後は、贈与をした祖父が死亡した時に、孫が贈与された教育資金を使いきれていなかった場合、そのおカネに相続税が課されるケースが増えます。 改正後は、祖父の死が教育資金贈与から3年以上経過した場合でも相続財産に加算されます。加算されない条件は、次のいずれか該当する場合です。①受贈者が23歳未満②学校に在学している③教育訓練給付金の支給対象の教育訓練を受けている。さらにこの相続税は、通常の孫への相続と同様に2割加算される改正もされました。

3.結婚・子育て資金贈与の特例

今年3月31日までとされていた期限が令和5年3月31日まで、2年間延長されます。 この特例を受けて贈与者が亡くなった場合には、未利用の結婚・子育て資金は、現行税法でも相続財産に加算されています。また、改正により通常の孫への相続と同様に2割加算されることになりました。

さて、実は来年度の改正後も、最大眼の注目をしておかなければならないことが待ち受けています。なんと前述の暦年課税にまで、見直しの議論が起こっているのです。 暦年課税が廃止になったり、使い勝手を悪くする改正が行われるのは、あまりにもインパクトが大きいことから、住宅取得資金贈与や教育資金の贈与などが使える今のうちに生前贈与をする必要性があるといえるでしょう。 子や孫に、感謝の気持ちとともに思い出してもらえる存在になることも、大切な置き土産です。

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