1.相続時精算課税制度の概要

1. 贈与者は60歳以上の父母または祖父母で、受贈者は20歳以上の子または孫になります。
2. 2,500万円まで贈与税が課税されず、2,500万円を超えた金額には一律20%の税金がかかります。
3. その後、その贈与者が死亡したときはその贈与者の遺産(相続財産)だけでなく、生前に相続時精算課税のより贈与した財産にも相続税を課税します。

2.権利義務の承継


相続時精算課税の適用を受けた受贈者(父B)がその贈与者(祖父A)よりも先に死亡した場合には、その相続時精算課税適用者の相続人は、相続時精算課税の適用を受けていたことに伴う納税に係る権利又は義務を承継します。

1.父Bが相続時精算課税の選択届出により贈与税納付
H30年3月に、父Bは祖父Aからの預貯金3,000万円の贈与について「相続時精算課税制度」の選択届出書を提出し、贈与税100万円を納付します。
(3,000万円-2,500万円)×20%=100万円
2.H30.9月に父Bの相続が発生
子Cは父Bの遺産を相続します。
{遺産総額7,000万円+(祖父Aからの受贈預貯金3,000万円)-基礎控除額3,600万円)}×税率30%-控除額700万円=1,220万円(相続税)
3.R2.6月に祖父Aの代襲相続が発生
子Cは祖父Aの遺産を代襲相続します。
{遺産総額2.7億円+(相続時精算課税による持ち戻し3,000万円)-基礎控除額3,600万円)×税率40%-控除額1,700万円=8,860万円(相続税)
(なお、実際の納付額は、贈与時に支払った100万円を控除した8,760万円です。)

3.問題点

1.子Cは父Bが亡くなった後、父Bの財産としてH29年に贈与された3,000万円を加算した相続財産に対する相続税として1,220万円を支払いました。
このうち、3,000万円に対応する相続税は、366万円となります。 1,220万円×3,000万円/1億円=366万円
2.子Cは祖父Aの遺産を相続するにあたり、相続税である8,860万円を納税することになりますが、そのうち3,000万円に対応する相続税は886万円となります。
8,860万円×3,000万円/3億円=886万円
3.持ち戻し分に関して「二重課税」が発生。
そして、この相続時精算課税を適用した3,000万円は、「父B」の相続時に相続財産として、366万円を支払いました。
さらに、祖父Aの死後に持ち戻しされているので「祖父A」の相続財産となり、改めて相続税(886万円)を支払う必要が出てきています。
これは二重課税の状態であり、相続時精算課税を選択しなければ支払うことのなかった税金と言えるでしょう。

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