1.配偶者の死亡により配偶者居住権が消滅した場合
- 配偶者の死亡により配偶者居住権が消滅した場合には、相続税の課税はされません。 その理由は、配偶者が死亡すると、配偶者居住権は消滅し、土地建物は完全所有権の価額になります。 これは、使用貸借と同様に、その期間が満了することによって終了し、また、使用貸借の期間を定めなかった場合には、借主がその目的に従い使用及び収益を終えることによって終了するのと同じとされています。つまり、
- 配偶者居住権は消滅するのであって、配偶者から居住権の財産価値が子へ移転したのではない。
- 配偶者居住権は、一身専属的な権利で死亡により消滅しますから、相続価値はありません。
2.生前に配偶者居住権が贈与や放棄がされた場合
配偶者居住権は時の経過にしたがって、その価値は減少しますが、価値はありますので、生前に贈与や放棄がされた場合には、その時の相続税評価額によって、贈与税が課税されます。3.配偶者居住権は第三者には、譲渡できません(民1032②)
配偶者居住権は、配偶者が自宅に住む使用貸借権(家に住む権利)に似た権利であり建物を利用できるだけで自宅を所有しているわけではありません。 しかし、価値がないと言うことはなく、所有権を持つ子どもとの合意により配偶者居住権の消滅の対価として金銭を取得することは可能です。4.居住用の3,000万円控除は使えない
配偶者居住権を他の相続人に譲渡する場合は、配偶者居住権は使用権などの債権で不動産ではないので、居住用の3,000万円控除適用はありません。 また、不動産の譲渡ではないので、総合課税の譲渡所得となり譲渡税が増加すると考えられます。5.配偶者居住権を放棄する場合、配偶者の意思表示が必要です(民 1035)
老人ホームに入居してから所有権者が自宅を売りに出したいと希望した場合には、配偶者居住権を購入するか放棄して頂くことになりますが、親が認知症であれば、意思表示ができませんので、売却は原則としてできません。 もちろん、配偶者が所有権を一部もっている場合にも同様のことが発生しますからこれは、配偶者居住権だけの問題ではありません。6.配偶者居住権を設定して小規模宅地等の特例を受けるとき
子どもが同居している場合には、通常は、子どもが優先して受ければ良いので、問題はないと思います。しかし、居住用以外に小規模宅地等の特例を適用できる敷地がない場合や同居してない場合には、子どもの配偶者居住権の敷地部分に は小規模宅地等の特例が適用できないので相続税が増加します。また、2次相続では、「家なき子」の特例が適用できる場合もありますので、そのようなことも考える必要があります。本ページに掲載した画像は情報サイト相続.co.jp様より転載許可を得て掲載しています。