1.社会保険加入の厳格化
不動産管理会社を設立して財産管理をする家族が役員報酬を受給して不動産オーナーの所得税や相続税の節税を図っていくというスキームは大分認知されつつあります。 しかし、特にここ数年は年金事務所から社会保険の加入義務がある旨の通知が不動産管理会社であっても以前より多くなり加入しないとの選択は厳しくなっています。 社会保険料については会社と個人で負担がおおよそ折半とは一般的には言われています。 しかし家族が設立する不動産管理会社では会社と役員は法律上区別されていますが、実質は全て一緒ですから、結局、会社負担分と個人負担分の両方を負担するためその負担は大きなものとなっています。 そこで社会保険の節約のためには下記のような方法が有効かと思われます。2.70歳以上の場合には厚生年金保険料の負担がありません
厚生年金保険料について69歳までが保険料の負担対象者となっているため代表取締役を70歳以上の親世代にすることで厚生年金保険料の負担が減ります。 不動産管理会社で相続税対策をする場合には、役員報酬を親世代に支払うことは相続財産を増やし相続税を増やすことになるので単純に考えると不利ですが、社会保険料の負担を考えると有利になる場合があります。 詳しくは後で説明します。 厚生年金保険料は会社と個人の負担率が概ね18.3%以上で、その負担がなくなるだけで大きな負担軽減になります。 更に、75歳以上になれば健康保険料についても社会保険から外れて後期高齢者保険になるので社会保険の負担が圧縮されます。3.法人業務の職制による社会保険の節約方法
法人の取締役であると原則として社会保険の対象者とされるため家族については取締役としてではなく従業員としてアルバイト程度の給料の金額で法人の業務を行えば上記代表取締役以外の社会保険の負担がなくなります。 また一方で法人役員でも監査役であれば一般的に非常勤扱いとされ社会保険の加入義務がないため場合により監査役として業務を行うのも検討の余地があると思われます。4.贈与を利用した節約方法
不動産管理会社の役割として大事になってくるのは一家としての財産管理をしつつ子供世代に財産を移転してくことです。そこで上記のように親世代を代表取締役にしてその業務に応じたある程度の金額の役員報酬の支払いをし、それを原資として子供たちに贈与していくことにより税金や社会保険料の全体としての負担を軽減させることができます。
贈与税については年間110万円の基礎控除があるためその金額までは無税で済みますが、相続税対策を考えた場合には、110万円では少なすぎる方がほとんどです。
例えば、500万円の贈与で48.5万円の贈与税なので負担率としては9.7%となります。
一方で同額の500万円を役員報酬として受け取ると所得税・住民税だけでも52.8万円で負担率10.56%となります。
別途社会保険料の負担も考慮すると贈与税の方が有利となります。
(事例) 役員報酬総額を親を含めて4人で1200万円という前提で考えた場合
①子供3人(介護保険対象)にだけ均等に400万円ずつ支給する場合と②子供3人に各100万円、75歳以上の親に残りの900万円支給して、その税引後の手残り743万円を子供3人に贈与した場合について検討します。
この場合の税金と社会保険料の負担を考えた場合には、②が有利です。(単位は万円単位)
① の場合 | ② の場合 | 差額(②―①) | ||
親の所得税等 | 78万円 | 157万円 | 157万円 | |
子供全員の所得税等 | 78万円 | 0円 | △78万円 | |
子供全員の社会保険 | 366万円 | 0円 | △366万円 | |
子供全員の贈与税 | 0円 | 42万円 | 42万円 | |
合計 | 444万円 | 199万円 | △245万円 |
5.事前確定届出給与の届出書を利用する
社会保険料の計算にあたっては月額支給、年1回の賞与支給についてそれぞれ下記計算対象金額の上限が定められています。① 月額 厚生年金料 63.5万円 健康保険料 135.5万円
② 賞与 厚生年金料 150万円 健康保険料 573万円
社会保険料の計算にあたり年間報酬の大半を賞与形式にすることにより社会保険料の負担を抑える検討の余地があります。
具体的には年間1200万円の役員報酬を
①月額で均等に100万円支給する場合②月額10万円支給 として残り1080万円を賞与で支給 する場合それぞれ下記社会保険料の負担になります。
①月額で均等にした場合の年間の社会保険料280万円
②月額10万円、残りを賞与とした場合の年間の社会保険料130万円
ただこの方法は、社会保険料を不当に減少させ社会保険制度上望ましいとは言えないとして、社会保険労務士からの批判がありますので、多額の役員報酬を貰っている場合の利用には慎重な取り扱いが求められます。
本ページに掲載した画像は情報サイト相続.co.jp様より転載許可を得て掲載しています。