1.概要
平成21年1月30日に借り入れで、甲不動産 を8億3700万円で購入。平成21年12月25日に借り入れて乙不動産 を5億5000万円で購入。購入価額13億8700万円が相続税評価額3億3370万円となり、購入・借り入れがなければ、課税価格は6億円を超えたが、課税価格は2826万円にとどまり、基礎控除の結果、相続税の総額が0円になった。
<甲不動産> 相続まで3年5ヶ月 保有継続
<乙不動産> 相続まで2年6か月 売却(5億1500万円)
被相続人は、平成24年6月17日に94歳で死亡した。
2.判決の要旨
論点1、相続税評価額より高い鑑定評価額の適用は違法でない。
判決は、鑑定評価額は、客観的な交換価値としての時価であり、相続税評価通達は、国税庁が出した通達にすぎず法的効力を有しないので、通達評価額を上回るからといって、相続税法22条に違反するものではないとした。
論点2、特定の者のみに鑑定評価額を適用することの合理的な理由。
判例は、特定の者についてのみ評価通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることは、合理的な理由がない限り 、平等原則に違反するものとした。 しかし、評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平 に反するというべき事情がある場合には、合理的な理由があると認められるから、平等原則に違反するものではないと解するのが相当である。
論点3、合理的な理由があると認められる場合とは。
① 通達評価額と鑑定評価額との間に大きな開きがあること。
甲不動産と乙不動産の鑑定評価額は12億7300万円で相続税評価額3億3370万円と9億3930万円もの開きがあります。しかし、開きあるだけでは問題としない。
② 租税負担の軽減を意図したこと。
判決は、近い将来発生することが予想される相続で税額の軽減を期待して、あえて本件購入・借入れを企画して実行したのは、租税負担の軽減をも意図してこれを行ったものといえるとした。
③ 他の納税者との看過し難い不均衡。
評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことは、本件購入・借入れのような行為をせず、又はすることのできない他の納税者との間に看過し難い不均衡を生じさせ、実質的な租税負担の公平に反するというべきであるとした。
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