今後の対応
1.鑑定評価額を時価と認めた
1.不動産を売却したかどうかは関係ない。従来は、不動産を購入後は、相続開始からしばらくすると売却しているので、客観的な交換価値が明確であったので時価評価を認めていた。本件の乙不動産は売却したが、甲不動産は売却してないが、鑑定評価額を時価としたことが認められている。つまり、売却しないで不動産を持ち続けても相続税評価額が認められないということです(その後の最高裁判決でも全く売却してない不動産の場合も鑑定評価額とされています)。
2.不動産として実態や採算性は考慮されない。
従来の判決では、マンションが一時的な保有の目的であり「一種の商品のようなもの」として、マンションの保有目的や賃貸の実態が考慮されたが、本件不動産はマンションの賃貸業として採算がとれて事業実態はあったが、それは考慮されなかった。
2.租税負担の軽減を意図してこれを行ったこと。
1.相続開始まで短期であること。「近い将来発生する相続で税負担を減らすものだと知っていた」の期間はどう考えるか。 「旧措置法(昭和63年成立平成8年廃止)69条の4ではいわゆる「3年しばり」の規定があった、法人では現在も「3年しばり」の規程があります。つまり、「近い将来発生する相続」とは、「3年」程度の期間内の相続開始では、やはり認められないと考えるべきだと言うことです。また、高齢者であることも関係あると思います。今回の被相続人は、90歳で最初の物件を購入し、94歳で死亡した。
2.借入による不動産投資(相続税評価額<借入金)であること。
「購入・借り入れがなければ、相続税の課税価格は6億円を超えたが、借入による不動産投資により、相続税の総額が0円になった。」とし、借入金により相続財産が軽減された行為を「看過し難い不均衡を生じさせた」としている。従って、数億円の軽減をもたらす借入による相続対策は難しいとかんがえられます。また、金融機関の貸出稟議書に借入の目的が相続税対策のためと記載されていたことも問題にした。
3.現金預金での不動産投資
今回の最高裁でも自己資金を不動産に投資したことは問題としていない。 別の判例では、他の不動産の売却した現金預金で取得した不動産については、相続税評価額で評価することを認めています。
4.地主さんがアパートやマンションを建築することは問題か?
マンションの購入でない、マンションを建築での事例を課税当局が否認した案件は、紹介されていません。従って、借入によるマンションの建築は問題ないと思います。
その理由として考えられるのは、地主さんが自分の土地にマンションを建築するのは、儲かるからなのであって、経済合理性から考えて、マンションの賃貸事業は当然の行為だからだと思います。
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